校長室から『物事に興味関心を持ち、探ろうとする力を育てるには?~キャリア教育・進路講演会~』
先日、アフガニスタン国連平和支援事務所(UNAMA)池邉英雄所長をお招きし、ご講演をいただきました。池邉さんは、高校卒業後に通信業界で10年ほどの職歴を積まれた後、退職して渡英、大学院で修士号を取られ、国連職員となられました。英国滞在中は、補習校で教壇にも立たれた経験もお持ちです。
そんな池邉さんに、まず、小学部1年生から4年生を対象にした授業に参加いただきました。「人はどうして働くのだろう」という大きなテーマの授業で、最初は子ども達に「大人になったら何をしたいか」が問われました。「不思議を解き明かしたい」「未確認生物を見つけたい」「やさしくて、いい人になりたい」など、それぞれの学年らしく、素直な思いを出すところから始まりました。その後、池邉さんから、国連の仕事の内容、紛争解決のための職員の生活などがスライドで紹介されました。普段見聞きしないことばかりで、子ども達も話にくぎ付けになっていました。
第2部の小学部5年生か中学部2年生までの授業では、「働くとはどういうことか?」というテーマの授業でした。子ども達は「お金を稼ぐ」「生活を支える」「生きがい」「人の役に立つ」など、現実的な生業の側面と、働く意思・意欲の側面から考えていたようでした。池邉さんの話は、低学年の部よりも高度な説明内容に変えていただき、生き生きと働くための気持ちの持ち方について、考えが及んでいったように思います。
この2部を通して、池邉さんが共通して伝えられていたことは、“探求心”という言葉です。これは、どんな職業においても、必要な要素です。例えば、伝統工芸を作る職人の世界であっても、常に“探求心”を持っていなければ過去の先達に近づくことはできないでしょう。また、製造業界、流通業界においても、旧態依然とした業種はほとんどなく、常に変化していく中で仕事は進んでいきます。教育界でも同様です。そうした中で働くためには、この“探求心”が不可欠と言えます。
講演会が終わってから、池邉さんに“探求心”はどのようなことをすれば身に付くのかを聴いてみました。まず、“探求心”は習慣で身に付けられることであり、何かを知れば、習えばというものではないとうことを話されました。では、どのような習慣が必要なのか。「時間をかけて考え、議論する中で育つのではないか」とおっしゃられました。そうした日常生活の中で、「なぜなのだろう?」「どうしたら、解決できるのだろう?」という“探求心”が生まれるのでしょう。つまり、学校でいえば、授業の中で考えさせる時間を多く増やしていくこと、家庭でいえば、子どもとじっくり対話する時間を増やすことなのでしょう。さらに、「知識はググれば、手に入れられますからね」とも話されていました。まさに、知識偏重の教育から、非認知能力も含めた、幅広い能力の育成を図らなければならないことを指摘されておられました。
もう一つお話で感じたことは、コミュニケーション能力の重要性です。紛争解決の話し合いは、まさにコミュ力がカギになります。池邉さんは、厳つい武装勢力の部族との話し合いは、あえてお昼の時間を狙うそうです。なぜなら、食事の時間と重なり、食べながら話し合うことで、本音トークができるからだそうです。“寝食を共にする”というコミュニケーションは世界共通ですが、それでも緊迫した状況下で実行できる人はそういないでしょう。つまり、それが池邉さん流の人との対話の姿勢であり、コミュニケーション能力が高いからこそ、そんなことが普通にできるのです。
池邉さんのお話は、子ども達だけでなく、学校教育、私の生き方にも参考になる、貴重なものとなりました。
テヘラン日本人学校で学ぶ子どもたちへ
なにかにきょうみをもつ。どうしてもしりたくなる。そのようなこは、これからどんどんかしこくなるでしょう。そして、どんなしごとをしても、たのしく、いきいきとはたらくことができるでしょう。