校長室から『自分は何ができて、何ができないのか~デジタルを使った体育の授業から~』
先日、小学部の体育の授業を参観しました。1年生、4年生の合同授業でしたが、跳び箱をしていました。1年生は開脚跳び、4年生はかかえこみ跳びの練習を繰り返していました。その授業では、先生がタブレットやスマートフォンを使って動画や写真を撮り、自身の跳び方を客観的に見ることができるようにしていました。タブレットのソフトには追っかけ再生の機能もありますので、来年度、個人用タブレットを更新すれば、動画や写真の撮影も子ども達ですることになるでしょう。
大切なことは、自身を客観的に見ることで、自ら向上させるといったプロセスを学ぶことです。私が若かった頃、授業のビデオを撮り、それを見て、自分の口癖や行動の特徴を理解するよう指導を受けました。見てみると、なんと無駄な言葉の多いことか。そして、不必要に教室内をうろうろしていました。授業に自信がないことにより、言葉を負いかぶせるように重ね、落ち着きなく行動していたのです。その時の子ども達の思考をずいぶんかき乱したと反省しましたが、こうした客観視による振り返りと改善は納得感と持続性がありました。しかし、自らを客観視することなく、「あなたの授業は、子どもに何を問うているのか分かりづらく、落ち着きがない」と言われても、素直に納得はできません。相手との信頼関係がなければ、反発する感情が入り、大切なアドバイスも受け入れられなくなることも多くなるでしょう。
大人であっても、子どもであっても、“メタ認知”の力が備わっていれば、他人よりも早く成長できると言われています。この“メタ認知”とは、「冷静で客観的に自分を見ることができる頭の中の自分」です。この思考は、小学校高学年から急速に発達すると言われています。ですから、この“メタ認知”力を高めるために、我々大人は、頭ごなしに叱ったり、一方的に決めつけたりせず、「どうだったの?」「それはどうして?」「どうしたいの?」と自ら考えさせる言葉がけをしなくてはなりません。そうして、冷静で客観的に自分を見させる機会をたくさん作っていくのです。さらに、冒頭に紹介したデジタルデバイスをうまく使っていくことも大切です。
来年度、AI教材・ドリルを使った学習に取り組んでいきたいと思います。教材・ドリルをしていくと、自身の弱点を探し、その克服に向けた学習、プリントをAIが出してくれます。先生にとっても、子どもにとっても便利な機能ではありますが、その学習活動で“メタ認知”力は育つのかは疑問です。確かに、これまでも先生が「あなたはこれができないから、今日はこの学習をしましょう」とやっていました。アドバイスするのが人間からAIになっただけで、大きな変化ではありません。しかし、おうちの人や先生、そしてAIからの指摘によって、行動するプロセスを少しだけでも、「自らで振り返る」行動プロセスへと変えていく必要があるように思います。
日本の子ども達は自ら学べない子が多いと聞きます。それを世界基準の、自ら行動できる人へと成長させていくためには、我々大人の接し方と、デジタルデバイス等の機器の利活用が重要な鍵を握っています。
【参考資料】『メタ認知とは?教育で注目される理由や子どもの力の伸ばし方は?』(ベネッセ教育情報HP)
メタ認知とは?【意味をわかりやすく】能力のトレーニング方法(カオナビ人事用語集HP)
テヘラン日本人学校で学ぶ子どもたちへ
このまえのたいいくのじかん、びでおでじぶんのうごきをみて、かんがえていました。「もっとじょうずになろう」というきもちがあるから、くわしくみていたとおもいました。