校長室から『少人数複式授業は改革のヒントがゴロゴロ~無学年制自由進度学習をスタート~』

 本校の2.3年生は、国語や算数、道徳などで複式授業をしています。複式授業とは、異なる学年の子どもたちを1つの学級に編成した複式学級で行われる授業を指します。異学年が同一の学級になる複式学級は本校のような超小規模な日本人学校だけではありません。日本全国には、4,000を超える学級が存在しています。中でも、北海道、鹿児島県、山口県が上位となっており、過疎化が進み、児童生徒数の減少による影響は否めません。しかし、複式学級が年々減少しています。その理由は、学校の統廃合が進んでいるからでしょう。

確かに、児童生徒数の減少による学校の小規模化、複式学級であることは、切磋琢磨する機会の減少や多様な考えを活かした授業展開という視点で見れば、ネガティブな問題です。しかし、マイナスばかりでしょうか。私は、そう思いません。やり方を変えていけば、30人学級にはないプラス部分が生み出せると考えています。

そこで、今年度から、2,3年生の算数科の複式授業では、自由進度学習を取り入れています。自由進度学習は最近注目されている学習方法で、各自のペース、やり方で学びを進める学習方法です。これまでのような、先生が黒板を使って主導する一斉授業では、全員同じペース、同じやり方で学習しなければなりません。先生に説明されなくても分かっている子にとっては、とても退屈な授業です。分からない子にとってはペースが速く、時には分かったフリをしたり、分かったと思い込んだりして、授業についていかなくてはなりません。一斉授業では、他社を気にせずゆっくり考えたり、すっ飛ばして先に行ったりすることは許されません。“みんな同じ”が、暗黙のルールです。しかし、自由進度学習は違います。自分のペースで進めることができます。

今、3年生が学んでいる学習は、『あまりのある割り算』です。計算が得意な子にとっては、やり方さえ理解できれば、どんどん進められる単元です。自由進度にすることによって、二人とも、3年生9月に行う単元、さらには4年生で学ぶ単元まで到達することができそうです。ちなみに、先週、『大きい数のしくみ』を学習しました。億までの位を学んだのですが、自由進度で次々と課題をクリアしていき、兆の位を学ぶ4年生の学習もこなしていきました。こうした、学年の枠を取っ払い、ここの理解力によって次々学んでいく自由進度学習を、私は“無学年制自由進度学習”と名付けました。

もう一つ、複式授業によるプラスの効果を生み出すには、異学年で学ぶ環境を活かさなくてはなりません。国語科は、教科書会社もよく工夫しており、小説、古典、現代文、文法などの配列は全学年同じにしてありましたので、昨年度は中学部2年生と3年生の複式授業を行いました。その際、2年生は一つ上の学年の内容を学ぶことができましたし、3年生にとっては下の学年の生徒の思考が刺激になりました。今年度、算数科を小学部2年生と3年生との複式授業をする際、計算領域、量と測定領域など、同じ領域になるものが同時進行となるようカリキュラムを編成しました。それにより、教科書順に学習することはできないのですが、教科書はあくまでもテキスト、教材と考えて、進めています。そうすると、時折、3年生が2年生の学習に割って入ってきてアドバイスをしてくれますし、2年生はそれとなしに3年生の学習を見聞きし、「次はこんな勉強になるのか」「今学んだことを活かしてできないか」と考えてくれているように思います(これは期待が80%)。異学年で学ぶことで、相乗効果が期待できます。

このように考えていくと、複式授業はまだまだ開発の魅力満載です。最近、“個別最適化”された学びが注目を浴びています。その背景には、児童生徒の能力が二極化し、学力上位層も、下位層もともに、中位層に焦点を当てた一斉授業では満足できなくなった実状があります。本校のような超小規模校は、児童生徒の能力に応じてフレキシブルに変化させることができる環境を持っていますので、どんどん新しい学習形態にチャレンジしていかなければならないと感じています。そして、本校の取り組みが、いずれ日本国内の授業改革につながっていければと夢を抱いております。

 

【参考資料】統計リアルHP『小学校学級数(複式学級)(公立)の都道府県ランキング【1975〜2022】』

 

テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ

あなたのまなびかたは、あなたじしんでみつけてほしいとおもいます。せんせいにいわれてするがくしゅうから、じぶんでかんがえ、くふうするがくしゅうにかえていきましょう。

校長室から『少人数複式授業は改革のヒントがゴロゴロ~無学年制自由進度学習をスタート~』

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