校長室から『子どもの対応能力を活かし、その先の授業を目指して~新しい学習のカタチの模索~』
オンライン授業をしていて、私と子ども達とで格段の違いを見せつけられることがあります。それは、タブレット操作の能力です。私のオンライン授業での指導能力は低く、9月当初、眠っていた過去の遺品であるホワイトボードを取り出し、マーカーを買いそろえ、画面越しに説明をする授業をしていました。まさに、教室でする授業をそのままオンラインでする感じでした。もちろん、動画教材の画面共有のかけ方ぐらいは知っており、教室の授業との違いと言えば、せいぜい動画を提示するぐらいでした。
そして、先生方の授業参観をオンライン上でしていくと、それぞれ工夫された授業を見ることができました。そのうちの一つを参考にして、最近は教科書を画面提示し、タッチペンで線を引いたり、書き込みをしたりして、より分かりやすい授業ができるようになりました。ただ、教師が一方的に教授する授業では、どんなICT機器を使ったとしても、明治時代から続く授業形態からは抜け出せていないように感じます。
一方、子ども達はどうかというと、トライ&エラーで、いろんな操作を試しているのでしょう。2年生の子は、あっという間にノートの写真を撮る技術を習得し、先日は、授業後に「校長先生へ。昨日の五時間目は、充電がずっと切れて、書写のかん字見せれなかったのでクラスルームにはっときました。」とメッセージ付きで、ノートの画像を送ってくれていました。子どものICT機器の対応能力はとても高く、日本で情報端末が導入された2020年には、多くの先生が「操作について、逆に子ども達から教わることが多い」と言っていました。この子どもの情報機器に対する対応能力は、大いに利用すべきことであり、活かしきれていない実状を痛感しております。
国は、“Society 5.0”という言葉を使って、未来社会への移行を目指しています。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)のその先の未来社会です。一方、学校教育は“Society 4.0”についていけているでしょうか。先に挙げた、子どもの能力は“Society 4.0”に対応しています。写真を撮り、要求していない先生にも画像送信して、学びを繋げようとしています。しかしながら、先生が指示しないと学びが止まってしまう今の多くの子ども達の実情は、我々学校が創ってしまっているのだと強く思います。
3年生の算数では、先生が指示することなく、自ら学んでいく授業を目指し、自ら学習計画を立てる“自由進度学習”に取り組んでいます。数と計算の領域では、上位学年の内容まで学習していました。最近は、「日本にする○○君がテヘランに帰ってきてから一緒に勉強したいので、先の学習はおいときます」と言うこともあり、3年生なりに“友達と学ぶ”という視点も、自由進度学習の要素として入れていることに驚きました。私が子どもから学ばせてもらいました。また、9月からeライブラリをタブレットに入れたのも、子ども達が先生の指示なく自ら学ぶ姿勢を創っていく仕掛けの一つです。
全国の学校では、自由進度学習などはとっくの昔の話で、学年の枠を取っ払った授業をしたり、子ども達自身が自らの時間割をつくったりする学校が出てきています。今はまだ突出した取り組みのように見えてしまいますが、いずれ形を変えながらも主流になるのではないかと想像します。
“Society 5.0”がやってくる前に、“Society 4.0(情報社会)”に応じた授業改善を図らなければならないと感じています。自戒も込めて。
【参考資料】内閣府HP『Society 5.0とは』
テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ
まなびは、じぶんからうごいてこそ、ちからになります。そんなこがふえていることを、とてもうれしくおもいます。