校長室から『真剣勝負を楽しむ~伝統の百人一首大会を開催~』
先日、本年最初の学校行事である『百人一首大会』を開催しました。この大会は、テヘラン日本人学校の恒例行事で、子ども達にとっても特別なイベントです。大会は畳の上で行われ、その年季の入った畳からも、学校の歴史を感じ取ることができます。今年は100首の中から、桃色の札と橙色の札に分けた計40首を競技対象とし、それぞれの部で優勝者と準優勝者が決まりました。
大会が始まると、子ども達の緊張感が会場全体に伝わってきました。保護者に加え、9月から派遣教員不在の間に支えていただいた日本人のスタッフや学校運営委員会の教育部長も観戦に来られたことで、普段とは異なる緊張感の中での大会となりました。冒頭の挨拶では、私はこう話しました。「これまでの練習の成果を発揮しようとする中で、緊張するのは当たり前です。共通テストに挑む高校生や、高校受験に挑戦している本校の生徒と同じように、この緊張感を楽しむ気持ちで臨んでください。」
大会では、“お手付き”をすると、自分の取り札の1枚を場に戻さなければならず、次の札を取った人に渡るというルールがあります。そのため、ミスをすると大きなリスクを背負うことに。しかし、子ども達はこれまでの練習の成果を発揮し、一瞬の隙も見せずに真剣勝負を繰り広げました。1枚の札が勝敗を分ける緊迫した試合が続き、観戦する側も固唾をのんで見守りました。
子ども達は学校での朝の会や家庭での練習を重ねてきました。中には、家族と対戦したり、取るべき札について相談したりする子もいました。何事にも全力で取り組む姿勢は、大人の真剣な関わりがあってこそ育まれるものです。運動会でも、大人が真剣に競技に参加する姿は、子ども達にとって大きな影響を与えます。今回の百人一首大会で子ども達が見せた真剣な表情も、そうした大人の姿勢から影響を受けた結果だと思います。
そして、最後は、保護者からのふるまいぜんざいをいただきました。大会が終われば、ノーサイド。それぞれの健闘を称え合いながらも、すっかり気持ちはぜんざいに向き、「おいしい」「久しぶりに食べた」と言いながら、楽しいひと時を過ごしました。私は、本来の学校が戻ってきたことを実感するとともに、子ども達の笑顔に癒されました。
この百人一首大会には、真剣勝負の場を提供するだけでなく、日本の伝統文化を継承するという大切な目的があります。俳句や短歌に象徴されるように、短文で深い思いを伝える文化は、日本人特有の奥ゆかしさや思いやり、洞察力の高さに繋がっています。これを継承することは、日本人の特性を次世代に伝え、グローバル人材を育成する上でも非常に重要です。
在外教育施設ならではの教育活動を実施することは、どの学校においても課題の一つです。本校でも、日本の伝統文化に焦点を当てた取り組みをさらに増やしていく必要があります。たとえば、イランの伝統行事である「シャベヤルダー」(冬至)では、ザクロやスイカを食べながら家族で過ごす風習があります。この行事にちなんで、本校では委員会活動の一環として『シャベヤルダー新聞』を制作しました。こうした自然に根差した伝統行事を大切にし、その意義を次世代に伝えることも学校の使命の一つだと考えています。
今年の百人一首大会は無事に終了しました。来年度には、今年以上に素晴らしい真剣勝負が繰り広げられることを楽しみにしています。
テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ
ひゃにんいっしゅたいかいでは、じつりょくがはっきできたこも、きんちょうがじゃましたこもいたでしょう。こんどは、スキーです。ゆきのなかをおもいっきりすべったり、ころんだりしましょう。