校長室から『調査結果から学力を支える基盤を多面的にとらえる~全国学力・学習状況調査の結果公表~』
7月14日、今年度の全国学力・学習状況調査の結果が公表されました。新聞紙各社は「国語と算数・数学で平均正答率が下落」「中3数学で、正答率が50%割れ」などと報道していました。毎年、問題が変わり、難易度も標準化されていないため、平均正答率の比較で学力が上がった、下がったというのはおかしな話です。ただ、一般的には正答率が気になるのでしょう。これは、これまで学校が点数評価を重視してきた影響であり、学校関係者はこうした思考になっている日本社会を見て、反省しなければなりません。
では、学校関係者はこの調査の何を見ているのか。それは、各設問で児童生徒がどのように間違ったかを考えるため、誤答傾向を結果から読み取ろうとしている点です。誤答分析とも言います。これにより、誤答を生み出さないよう、授業を改善していく方策を見つけるのです。もう一つ見る視点は、学力を支える基盤は何かを読み取ることです。古くから、規則正しい生活と学力との相関関係は言われています。学力が高いから生活習慣もしっかりしているのか、生活習慣がしっかりしているから学力が高くなっているのか、それはわかりません。ただ、“ニワトリが先かタマゴが先か”のように、どっちが先ということを考えるのではなく、それぞれは影響し合って、学力を支える基盤にはなっているものを見つけて、指導に役立てていくことが重要です。現在、学習状況の結果は公開されていないため、まだ断定的なことは言えませんが、少なくとも、学校関係者は平均正答率の年度間比較で一喜一憂はしません。
この学力を支える基盤を考えるにあたり、全国学力・学習状況調査での注目ポイントは担任をはじめ授業者である先生のことを尋ねた設問です。
「先生は、あなたのよいところを認みとめてくれていると思う」
「困りごとや不安がある時に、先生や学校にいる大人にいつでも相談できる」
「先生は、授業やテストで間違えたところや、理解していないところについて、分かるまで教えてくれていると思う」
対応には限界がありますが、先生の対応と学力と相関関係があるのではないかと文部科学省は考えている証であり、私は大いに関係していると思います。理由はわかりませんが、国語だけ次のような設問もありました。
「授業で、先生は、あなたの良いところや、前よりもできるようになったところはどこかを伝えてくれる」
「授業で、先生は、あなたの学習のうまくできていないところはどこかを伝え、どうしたらうまく できるようになるかを教えてくれる」
これも、学力とは大いに関係しているでしょう。ただ、先生はこの結果に一喜一憂する必要はなく、そのような対応ができたのはなぜか、できなかったのなぜかを考えることが必要です。私は、職場環境が影響していると考えています。時間的なゆとりだけでなく、人間関係のゆとりも必要でしょう。ですから、上記の調査結果は、先生より、管理職が特に意識して分析しなければならない項目だと捉えています。
全国の学校では、未だにこの調査に対するアレルギーはあります。「全国一斉一律ではなく、抽出にすればよい」という声もよく聞きます。私も、データ取りをして分析するのではあれば、抽出調査で十分だと思います。ただ、2007年から始まった、この調査は、日本中すべての学校に対して、「学力向上にかかわる教育者である」という当事者意識を促す役割を果たしてきたとも言えます。「この調査問題で本当の学力は測定できるのか」という議論が起きたことも、学校が学力の定義を考え始めるきっかけになりました。私もその一人です。
ですから、この機会に学力とは何か、学力はどうしたら向上できるのかを改めて考えてみたいと思います。ちなみに、私が考える学力を支える最大の基盤は家庭です。ところが、その部分についての設問は、この調査には少ないように思います。
テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ
わかるとたのしい。たのしいからわかる。どっちでもいいんだけれど、かんけいしていませんか。