校長室から『チームで関わるということ~前期終業式の一コマから~』
本校の超小規模校の良さは、子ども同士の家庭的な雰囲気のほか、先生と子どもとの距離が近いこと、そして先生全員で一人の子に関わろうとする意識が高いことが挙げられます。
全国では、固定学級担任制ではなく、教員がチームとなる“チーム担任制”が静かなうねりとなっています。私は前任校で、小学校ではまだ前例の少なかった2020年からこの取り組みを始めた経験があります。あれから5年が経ち、兵庫県内でも複数の学校が導入するようになりました。
私がテヘラン日本人学校に来たとき、教員の多くが「一人の子どもに多くの先生で責任を持って関わり、心理的な安心感を与えたい」という思いを持っていました。しかし実際に見てみると、“チーム担任制”を導入しなくても、すでにそれが実現できている様子が見られました。そのため、当初は現状のままでよいと考えていました。ところが、1年目が終わる頃、一人の先生から「チーム担任制にしてみませんか?」という提案があり、それをきっかけに昨年度から本校でも“チーム担任制”を導入しました。
以前は先生方の意識によってチーム的に関わっていましたが、制度化したことで、その意識がさらに強まりました。先生たちは「自分が担任だから」と責任感を優先しすぎて、「私を通してもらわないと困る」といった考え方を持つこともなくなり、誰もが気兼ねなく、思い立ったときにすぐ行動できるようになりました。子どもたちも「まずは担任の先生に」と順番を気にする必要がなく、話したい先生に、話したいときに声をかけられるようになっています。
そんな“チーム担任制”の良さを再発見したのが、先週の前期終業式後の出来事でした。教務の先生から「中学部の生徒には通知表を渡した後、担任の先生が順番に教科ごとに話をしてはどうか」という提案がありました。オンラインでの実施だったため、1時間の学級活動の中で先生がうまく交代できるか心配していましたが、実にスムーズに交代しながら、各先生が学習の振り返りやアドバイスを伝えていました。これは、超小規模校だからこそできること、そして“チーム担任制”だからこそ生まれた発想だと思います。通知表を見ながら5人の先生から順に話を聞いた生徒は、「いろんな先生から話を聞けて楽しかった」と語っていました。心理的な安心感も同時に感じ取ってくれていたようです。
前任校で“チーム担任制”を始めたとき、子どもたちからは好評でしたが、一部の保護者からは不安や不満の声も上がっていました。現在では、そうした声もほとんどなくなったと聞いていますが、当時はどう応えればよいか悩むこともありました。私は、保護者懇談会の際に“チーム担任制”の先生全員と懇談できるようにすれば、多くの先生が多面的に子どもを見ていることを伝えられるのではないかと考えていました。
残念ながら時間的な制約から実現はしませんでしたが、今回、中学部の子どもたちが全員の先生からアドバイスやエールを受け取った時間は、過去にできなかったことが実現した瞬間でもありました。前任校のように多人数の学校でも、“チーム担任制”では多くの先生が担任として責任を持ち、多面的に理解しようとしていました。それが一部の保護者に伝わりにくかっただけで、子どもたちはしっかり実感していたのだと思います。今回、終業式の日に全担任が交代で声をかけていくことで、その実感がさらに深まったと感じます。
チームで関わるという取り組みが、目に見える形で実現したことを、心から嬉しく思いました。
テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ
おおくのせんせいがあなたにかかわり。しんぱいし、はげましてくれています。そして、あなたのよさをいろんなせんせいがはっけんしてくれています。