校長室から『ここにしかない学びがある~2年ぶりの学習発表会を開催~』
昨年に引き続き、今年も6月に一時退避を余儀なくされました。派遣教員が学校に戻れたのは12月初めでした。その間はオンライン授業を進めていましたが、画面越 しでは実施できない教育活動も数多くあります。その一つが、多くの人に子どもたちの成長を直接見てもらう機会をつくることです。運動会や学習発表会などがそれにあたります。
昨年度は、派遣教員がテヘランに戻ってからも十分な準備時間を確保できず、オンラインでの実施となりました。しかし、今年こそは多くの日本人関係者をお招きし、子どもたちの姿を直接見ていただきたいと願い、対面での実施にこだわりました。そして先日、ようやく実施することができました。
発表内容は、ペルシャ語、個人研究、音楽の三本立てです。いずれも、全員が主役として発表する構成になっています。9月からテヘランにいた子どもたちは、オンラインで少しずつ準備を進めていましたが、12月に戻ってきた子どもたちは、限られた時間の中で急ピッチで取り組みました。
ペルシャ語の発表は、レストランを舞台にした劇で、見ている人にも楽しんでもらおうと、随所にユーモアを取り入れた内容でした。オールペルシャ語の発表ですから、相当な暗記が必要です。それでも、子どもたちは見事にセリフを覚え、流れるように会話していました。
個人研究では、日々の学習の中から自分なりの疑問や興味を見つけ、それを深めて発表しました。世界の気候と文化の関連を調べた子、インド式計算法を手がかりにインド文化を掘り下げた子、歴史学習から伊能忠敬の足跡を調べ直した子など、どれも個性豊かで、聴き応えのある内容でした。私は聴きながら、「なるほど」「そういう見方があるのか」と思わず声が出るほどで、よく調べ、考え抜いた発表に感心しました。
音楽では、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の名曲を、ショーのように構成されたプログラムの中で、歌や合奏として披露しました。先生たちも二部合唱の低音パートで参加しました。合奏では、一人が複数の楽器を持ち替えながら演奏し、リコーダー、木琴、カスタネット、太鼓と、まさに一人四役をこなしていました。
会場準備も、子どもたちの手によるものです。舞台の壁面には「日本人学校へようこそ」と、ペルシャ語を習字で表現しました。さらに、音符や鉛筆、ノートの装飾も、型紙づくりから切り取り、貼り付けまで、すべて自分たちで行いました。
私は、この発表会までの取り組みを見ながら、「ここにしかない学びがある」と強く感じました。これほどまでに、一人一人の子どもが全力で関わる発表会は、国内の学校ではなかなか見られません。児童生徒数の少ない学校だからこそ、すべてを自分たちで担わなければならず、手を抜くことができない現実があります。その分、責任と達成感は大きく、子どもたちにとって大きな成長の機会となったことでしょう。
来場いただいた方々も、子どもたちにとっては特別な存在です。普段から顔を合わせる、“斜めの関係”にある大人の方々です。その方々が、実にあたたかいまなざしで子どもたちの発表を見守ってくださいました。そのため、会場全体がやさしく包み込まれるような空気に満ちていました。
そのような雰囲気の中で発表することで、子どもたちは「守られている」「期待されている」という安心感を得たことでしょう。これも、国内の学校ではなかなか味わえない空気感であり、まさに「ここにしかない学び」です。
テヘランという地で、小さなコミュニティの中に暮らし、同級生の少ない環境で学んでいる本校の子どもたち。国内と比べると、身に付けにくい力があるのも事実です。しかしその一方で、ここだからこそ身に付く力、ここでしか味わえない思いがあります。そのことを、子どもたちの姿から改めて感じ取らせてもらいました。
心に残る、素晴らしい学習発表会でした。
テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ
ながいじかんをかけて れんしゅうしてきましたね。はっぴょうは どうでしたか。うまくいっても、うまくいかなかったとしても、ここまで がんばってきた そのとりくみが、あなたたちを おおきく せいちょうさせました。
