校長室から『人は人を浴びて人となる~教科担任制のメリット~』
本校の大きな特徴は、4年生以上が教科担任制になっていることです。4年生でも、国語、社会、算数、理科、体育は指導する先生が違います。図工や英語、ペルシャ語は現地採用の先生が指導していますので、1週間で8人の先生の授業が入れ代わります。本校は中学部のある小規模校ですから、小学部でも必然的に教科担任制にならざるを得なかったという経緯もありますが、小学校高学年から教科担任にしているのは時代の先端と言えます。
令和3年に中央教育審議会から出された『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)』において、小学校高学年での教科担任制の導入を謳っています。しかしながら、国内の小学校では実際のところなかなか進んでいないのが現状です。その理由の一つとして、これまでの既存概念に教員が縛られていることが挙げられます。ただ、中央教育審議会がなぜこのような教科担任制の導入を明記したのか。そのことをよく考えてみる必要があります。
教科担任制導入の大きな要因は、教育内容の高度化です。国際社会の中で、日本の教育は常にトップクラスを維持してきました。しかし、多くの国々が教育に力を入れる中、現状維持をしてきた日本は相対的に見ると、下降状態となりました。そのため、教育内容はより高度化していく必要に迫られています。しかし、一人の担任の先生では全教科の教材研究、指導は困難です。そのため、より専門性の高い、算数、理科、体育、外国語などを例示し、教科担任制の導入を進めています。
しかし、私は教科担任制導入のメリットは別の意味も持っていると考えています。教育は、「人は人を浴びて人となる」という言葉のように、教材からだけでなく、人から学ぶ要素が非常に大きいです。どんな先生から、どんな教え方から学ぶかによって、子どもたちの学習意欲も変わってきます。固定学級担任制では、自分に合う先生がいれば、合わない先生もいて当然です。それぞれの先生には指導のスタイルがあるので、子どもたちにとっては、毎年、“俺流”が存在しています。子どもは大人以上に柔軟で従順ですから、“俺流”には付き合ってくれますが、一人の先生と過ごす時間が1年となると、相当な擦り込みになる危険性もはらんでいます。私は、より多くの人から、人となりや指導法に出会い、自分に合った学び方を体得していくのが自然だと考えています。それに、先生も万能ではありません。理系分野が得意な先生もいれば、文系分野が得意な先生もいます。歳を重ねると、だんだん体育ができにくくもなります。先生も得意なことを教えられるシステムの方が、やりやすさと共にやりがいも出るのではないかと思います。このように、教科担任制は子どもたちにとっても、先生たちにとってもメリットは大きいと言えます。
ちなみに、低学年の児童は1対1の人間関係から学ぶ時期であり、教科担任制より学級担任制の方が教育的効果は高いと言われています。
【参考資料】「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)令和3年1月26日中央教育審議 会
テヘラン日本人学校で学ぶ子どもたちへ
まいにち、きょうかがかわるごとにせんせいがかわるのは、どうですか。たくさんのせんせいから、たくさんのことをまなんでください。