校長室から『国際協力は人との繋がりから生まれる~JICAの田中さんの特別授業~』
先週木曜日は、JICAの田中理さんをお迎えして、国際協力について学ぶ、特別授業をしていただきました。社会科ではJICAの取り組みについて学びますが、国内にいますとJICAの人から直接活動についてお話を伺う機会はありません。しかし、今回のような特別授業が開催できたのは、テヘランの狭い日本人社会だけでなく、田中さんの穏やかで、優しいお人柄があったからです。
お話の内容は、田中さんの経歴、そしてJICAの取り組み、さらには「実現すべき平和って、どんな姿だろう?」「国際協力って、どんなことが大切なの?」という投げかけが子ども達にどんどん飛び、今一度、国際平和を深く考えることができました。また、保護者の参観者も多く、子どもと大人が一緒になって考える良い機会となりました。
私が小さい頃は、“世界平和”なんて遠い世界の話で、誰か、ものすごく強いヒーローのような人がやっているだろうなぁと思っていました。実際に、大国のリーダーが握手するテレビの映像を見る時しか考えなかったことです。しかし、大人になるにつれて、社会の仕組みが理解できるようになり、市民の力ほど強大なものはないと考えられるようになりました。そして、今回、田中さんがエジプト、イスラエル、イランと拠点を移し、当地の生活者が安心して暮らせる場所づくりに奔走されるお話しを聴き、市民の力は大きいことのように感じました。子ども達は、田中さんの取り組みを聴いて、国際協力は遠い世界の話ではなく、また他人事ではなく、身近なところにあることが分かったと思います。
さらに、「国際協力を実現するためには、相手のことをよく知らなければならない。何を求めているのか。怒っていれば何に怒りがあるのか。そんなことを知ろうと思わなければ見えてこない」とおっしゃられていました。これまでの経験からくる、田中さんらしい言葉だと思います。ここに住んでいると「イラン人は・・・」「イランという国は…」という話になりますが、ポジィティブに理解しようとする時ばかりではありません。そんな時に、日本人の価値観でイランを判断しようとしていた姿勢を振り返り、この国の文化、歴史、現状を踏まえた思考をしなければなりません。そして、田中さんがおっしゃられる、よりよく知ろうとする姿勢を持たなければ、本当の姿は見えてきません。そのことは、ここイランで生活する子ども達に一番必要なことであり、とても良い学びとなりました。
また、田中さんが、どうしてJICA職員になったのか、そして今後何をしていきたいと考えているのかについても語られました。今回の特別授業は、社会科的な内容ではありますが、実は子ども達のキャリア教育に大きくかかわっているお話だったと思います。キャリア教育とは、単に職業選択というだけでなく、生き方選択もその範疇に入ります。田中さんは、子どものころから「正義のために力を発揮したい。人の役に立ちたい」という思いを持っておられ、警察官や外交官などを目指しながら、たどり着かれた先がJICAでした。キャリア形成に一本の筋が見えました。ここテヘランで生活している子ども達は、イランで生活した原体験をもとに、国際感覚を身に付けた人として、職業、生活、趣味などの分野では、世界と何らかの形で関わることになるでしょう。ただ、その時に必ず必要なことは、自分は何者で、何ができて、何を実現したいのかを明確に持っていた方が、関わり方はより強くなります。その意味で、今回の田中さんの特別授業が、自身の生き方の根幹を考える機会になってくれればと思いました。
テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ
たなかさんのはなしで、あなたはなにをかんじましたか。そのかんじたことは、これからのせいかつにかならず、かんけいすることです。たいせつにしてほしいとおもいます。