校長室から『自分の未来を自分で創っていく力を育む~キャリア教育の重要性~』
来週28日、オンライン形式で進路講演会を行います。昨年度は、アフガニスタン国連平和支援事務所(UNAMA)池邉英雄所長をお招きし、「人はどうして働くのだろう」というテーマでお話を聴きました。今年度は、三菱UFJ銀行の竹下大介さんにご登壇いただき、「未来とお金を考える日」というテーマでお話しいただくことになっています。小学部、中学部の二部構成で、いずれのご講演も、保護者のオンライン参観が可能です。ぜひ、ご視聴いただければと思います。
さて、毎年、講演会は『進路講演会』という名称で行っていますが、いわゆる“キャリア教育”に位置づけております。“進路”という言葉からは、進学や就職などに矮小化される傾向がありますが、決してそのような小さな領域ではなく、広く言えば「将来をどう生きるか」といった教育です。生きる上で、職業は切り離すことはできないことであり、そこに向かう進学も重要です。そして、今回のお金についても、生涯切り離せないことの一つです。また、趣味、余暇の過ごし方という領域も、「将来をどう生きるか」を考える際、大切な意義を持っています。私事ですが、無趣味な人間からすれば、老後をどう過ごすかは切実な悩みになっています。
文部科学省が出している『キャリア教育の手引き』では、国立教育政策研究所生徒指導研究センターの『職業観・勤労観をはぐくむ学習プログラムの枠組み』を紹介していますが、その枠組みの基本的な軸として、「人間関係形成能力」、「情報活用能力」、「将来設計能力」、「意思決定能力」の4つの能力領域を挙げています。「人間関係形成能力」とは、自他の考えを理解する力、他者と協力・協働するためのコミュニケーション能力のことです。「情報活用能力」とは、情報を適切・効果的に収集して、問題解決に活用していく力のことです。「将来設計能力」とは、自他の役割を把握し、自己・社会実現に向けて計画・実行していく力のことです。そして、「意思決定能力」とは、多様な選択肢から納得できる最善の決定をし、その結果に対処できる力のことです。情報社会によってグローバル化・多様化が進展し、予測困難な時代を生き抜くには、いずれの力も必要になってきます。
私の故郷丹波市でもキャリア教育を実践していますが、市教育委員会の取り組みとして、小学校では『丹波ふるさと学』、中学校では『丹波みらい学』というカリキュラムがありました。その『みらい学』では、自分の将来してみたい職業を、地域の起業家や農協職員、市役所職員の前でプレゼンするという活動でした。大人の前で自己アピールし、あれこれと質問されるわけですから、相当な緊張感だったと想像します。そこに、地域の銀行マンにも来てもらっていました。その時に、「あなたは、簡単にお金を借りると言ったけど、銀行は信用できる人でないと貸さないよ。あなたは、今、お友達に信用されていますか」と質問されていました。かなり厳しい質問ですが、社会の扉を開こうとしている中学生にとっては、大切な関門だと感じました。これは、先ほどの4つの柱の根底にある「人間性」に関係してきます。この「人間性」を土台にせずに、キャリア教育の4つの柱を立てれば、独りよがりで、非常に危険なものになりかねません。つまり、「人間性」の育成も、キャリア教育の大切な柱であると考えています。
来週ご講演いただく竹下さんは、とても魅力的なお人柄です。子ども達には、ご講演の内容だけでなく、人間性についても学んでほしいと、欲張りですが思っています。
【参考資料】小学校キャリア教育の手引き(2022年3月)
テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ
みなさんのまわりには、すてきなおとなたちが、すてきにせいかつされています。そのひとたちからおはなしをきいて、これからのすてきないきかたをかんがえてほしいとおもいます。