校長室から『行事をやりきることで大きな成長を得る~スポーツフェスティバルを開催~』

 先週末、アマルスポーツコンプレックスの体育館をお借りして、スポーツフェスティバルを開催しました。児童生徒と保護者20名、日本人会34名、ドライバー5名が参加し、半日、さまざまな競技をして楽しみました。子どもたちの表現ダンス『ソーラン節』『できっこないをやらなくちゃ』も、9月からオンライン授業の体育で練習を始め、テヘランでの授業再開後に全体練習をし、体育館でのお披露目に至りました。

 当地でこうしたスポーツができていることは平和の証であり、再び日常が戻ってきていることを、参加した日本人全員が実感しました。そして、玉入れ、ボール送り、テヘランメドレー、綱引き、紅白対抗リレーなど、大人が本気度マックスで取り組んでいたので、その姿を間近で感じる子どもたちにとっても、幸せな時間だったと思います。かつては、商社対抗の構図もあり、大人が本気になりすぎて子どもたちへの声援も熱を帯びすぎ、その圧力に泣き出す子もいたと聞いています。しかし、今はそんなこともなく、子どもたちには温かい目を向けてくださっています。ただ、「やるからには勝たなくては」という気持ちがにじみ出ており、それが子どもたちを鼓舞しているようにも見え、いい瞬間だなあと感じました。

フェスティバル冒頭の挨拶でも話しましたが、近代オリンピックは、「競い合い、協力し合い、応援し合い、互いをリスペクトした先の世界平和」をめざして開催されました。その精神は、ここテヘランでのスポーツフェスティバルでも大切にされています。

 終了後、学校に戻ってきた先生が、それぞれの児童生徒の成長を口にしていました。このような小さな学校ですから、ダンス以外にも、挨拶、ラジオ体操・整理体操リーダー、結果発表、校歌の指揮者など、すべての子に全員の前に一人で出る場が用意できます。演技だけでなく、こうした役割の場面においても、それぞれが活躍しました。

そして、ダンスは9月からの長い練習期間となりましたが、その間の運動技能の向上もありました。テヘランでオンライン授業を実施していた時の見守り支援スタッフ、岡さんは「画面を通じて指導されたダンスが、最後はこんな形になるんですね。見ていて感動しました」とおっしゃっていました。そんな言葉をいただき、むしろ我々が感動させられました。多くの人たちの力で今回のスポーツフェスティバルが実現し、子どもたちが活躍できたのだと実感しました。

よく、「子どもは行事ごとに成長していく」と言われます。いま日本で話題の『小学校~それは小さな社会~』でも、運動会や音楽会の取り組みを通じて子どもたちが成長していく様子が紹介され、それが反響を呼んでいるように、行事による子どもの成長は、ほとんどの先生が信じて疑わない事実です。そんな様子が、今回も見ることができました。

行事による成長は、子どもたちに限りません。我々学校組織においても同じです。“(一時避難帰国で)失われた教育活動を取り戻す!キャンペーン”の最後を飾ったスポーツフェスティバルですが、1月から2月まで、百人一首大会、スキー教室、遠足と学校行事は目白押しでしたので、当初は、子どもたちの負担や先生たちの業務量も考え、親子活動として軽くスポーツをするだけで十分と考えていました。しかし、先生が校長室にやって来て、「運動会とまではいかなくても、できることは全部していきましょう」と言ってくれました。そして、「他の先生もみんな気持ちは同じです」と。私は職員室に行き、「本当にできるのか、大丈夫か?」と尋ねましたが、先生たちの気持ちは揺るぎませんでした。まさに、ダンス曲と同じく、“できっこないをやらなくちゃ”です。

 右の図は、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が考えた『組織の成功循環モデル』です。これは、組織に限らず、個人レベルでも当てはまります。行事を行う計画を立てた段階で「どうすれば成功するのか」と思考の質が高まり、それを受けて、成功に向けた行動の質が高まります。そして、今回のように互いに称え合うことで結果の質も高まっていきます。その良い結果によって、集団の関係の質はさらに向上します。子どもたちや先生たちの人間関係は、スポーツフェスティバルを行ったことで、さらに良くなりました。

先日、オンラインで学会の研究大会に参加した際、この循環モデルについて学びました。その際、好循環のスタートになるのは“関係の質”であると聞きました。確かにその通りで、テヘラン日本人学校の児童生徒が持つ家族的な雰囲気がなければ、この成功はありませんでした。そして、日本人会の大人が真剣に競技に取り組み、最後は称え合う姿勢がなければ、成功はなかったでしょう。もちろん、我々学校組織も同様です。今回、結果の質を一段階上げていただいたので、さらに校内での関係の質も向上させていきたいと思います。そして、この好循環を続けていけば、より高いレベルまで成長できると信じています。

 

テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ

こんなにも、たのしいかいになったのは、みなさんが、きょうりょくし、はげましあい、おうえんしあったからです。すばらしい1にちをつくってくれて、ありがとう。

校長室から『行事をやりきることで大きな成長を得る~スポーツフェスティバルを開催~』

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