校長室から『“啐啄同時”を感じた半日となりました~新年度着任式、始業式、入学式を開催~』

テヘランにも春が訪れ、街には花が咲き誇り、穏やかな気候が続いています。時折、春雷のような雷雨に見舞われることもありますが、雨上がりにはさわやかな風が吹き、大気汚染によるどんよりとした空も晴れ渡っています。この心地よい気候が長く続いてほしいと願う一方で、間もなくやって来る夏に備える気持ちもあります。

さて、先週より本校の新年度が始まりました。本校では、新任の先生の着任式、始業式、そして入学式を、半日のうちに一気に行うのが通例です。子どもたちにとっても、先生たちにとっても、慌ただしいスタートではありますが、その分、勢いのある始まりとなりました。

 まずは着任式です。今年度は静岡県から新たに先生をお迎えしました。また、音楽の先生も来てもらうことになりました。児童代表が、春休み中に考えていた歓迎の作文を読み上げ、本校の魅力や、一緒に学べる喜びを伝えることができました。

続く始業式では、地中深く根を張るタンポポを題材に、「見えないところで努力を積み重ねることの大切さ」を伝えました。人目のないところで根を伸ばすように、私たちもしたたかに、そしてたくましく成長していこうと呼びかけました。

そして、その日の締めくくりは入学式でした。小学部1名、中学部2名の入学生を迎え、ご来賓や保護者の皆様、さらには日本人会の方々まで、多くの方にご出席いただき、式を盛り上げていただきました。特に、日本人会の会員の方々から「ぜひ入学式に参列したい」というお申し出があったことは、とても嬉しい出来事でした。

私は常々、「人は人を浴びて人となる」という言葉を大切にしています。在校生や先生、保護者だけでなく、地域の一員としての日本人会の皆様の温かいご参加が、子どもたちにとって「自分たちは多くの人に囲まれ、応援されている」という実感をもたらしたことでしょう。その実感はやがて、「今度は自分が誰かを支え、応援する人になりたい」という思いへとつながっていくはずです。これこそが、「人を浴びて人となる」瞬間であると感じます。

 このように、着任式、始業式、入学式という三つの大切な儀式を約4時間のうちに終え、新年度の初日が過ぎていきました。振り返れば、子どもたちのやる気を、保護者や先生方、日本人会の皆様の優しさが温かく包み込んだような、そんな半日だったと感じています。

ここで、“啐啄同時(そったくどうじ)”という言葉をご紹介します。この言葉は、「学ぼうとする者と、それを導こうとする者とのタイミングがぴったりと合うこと」を表しています。雛鳥が卵の殻の中から突く“啐”と、それに応えるように母鳥が外から突く“啄”が同時でなければ、雛は無事に孵化できません。

子どもたちの「やる気」は、最も大切です。しかし、それだけでは成長にはつながりません。周囲の適切な関わりがあってこそ、子どもは殻を破り、大きく成長していくのだと思います。とはいえ、何でも手を出すことが優しさではありません。時には手を放すこと、遠くから見守ること、そして必要な時には厳しく叱ることも、子どもが自らの力で殻を破るために必要な支援です。たとえば、小学校低学年のうちは手をかける時間が多く必要ですが、3年生くらいになると、「やらせてみる」「少し離れて見守る」時間が増えていきます。高学年になると、結果を見て「どうだった?」と声をかけることが主になり、中学生にもなると、そうした言葉すら時にわずらわしく感じることもあるかもしれません。だからこそ、気にかけているという姿勢を持ち続け、助けを求められたときに手を差し伸べること、それが必要な関わり方になるのだと思います。まさに、中学生こそ、“啐啄同時”のタイミングを逃さないことが大切です。

そんなことをふと考えさせられる、春の始まりの一日でした。

 

テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ

いよいよ2025ねんどがはじまりました。あなたは、どれだけせいちょうできるでしょう。まずは、あなたのやるきをみせてください。まわりのひとたちは、みんなあなたをおうえんしています。

校長室から『“啐啄同時”を感じた半日となりました~新年度着任式、始業式、入学式を開催~』

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