校長室から『学校だからこそできることを考える~5カ月ぶりに通常授業を再開~』

今週から全派遣教員がテヘランに戻り、日本の学校に転出していた児童3名も再入学を果たし、通常授業が再開しました。日曜日には、先生たちが玄関で子どもたちを迎え、「久しぶり」と声を掛け合い、にぎやかな朝となりました。講堂で全校集会を行い、子どもたちとともに先生たちが車座になって顔を突き合わせ、今の気持ちや5か月間の生活について語り合いました。その表情を見ていると、みんなとても嬉しそうで、私も心から安堵しました。

私はその集会で、「授業を受けられる。学校で友達と話をする。そんな当たり前のことが、当たり前ではなくなった。この国では、日本の当たり前がそうではない。いや、日本だってコロナのときには当たり前がなくなった。だからこそ、戻ってきた当たり前に感謝しましょう」
と話しました。

コロナ禍のときは日本中が同じ状況でしたが、テヘラン日本人学校の子どもたちは、今回は「ぼくたちだけが」という思いを抱いたことでしょう。寂しく、不安な日々も多かったはずです。だからこそ、今、目の前にある学校生活や授業はかけがえのないものです。1日1日を、そして1時間1時間の授業を大切にしてほしいと思います。

この5か月間、子どもたちと先生はオンライン授業という形でつながってきました。画面越しではありましたが、子どもたちは先生を信頼し、先生も変わらぬ愛情で学習支援を続けてきました。しかし、安心感や信頼、そして温かい思いは、やはり画面だけでは伝えきれません。これからは、5か月分のブランクを埋めるように、心を込めて教育活動に取り組んでいきたいと考えています。

そこで、これからの4か月間で何を重視していくのか。私は、まず、人から直接学ぶこと、体験から考えること、人と関わる中で得られる肌感覚の学びを最優先していきたいと思います。授業や生活の中で、「びっくりした」「確かめてみたらそうだった」「初めて経験した」。そんな声がたくさん聞こえる学校を目指していきます。

退避中に、地元の教育長と話す機会がありました。不登校の増加がどの地域でも課題となる中、「子どもたちが学校に来たいと思える授業を、先生はしなければならない」と話されていました。どの先生方も厳しい職場環境の中でよく頑張っておられると思いますが、学校に来たからこそ味わえること、学校に来たからこそ獲得できる知識や技能は何かを考え、授業や学校生活を見直す必要があると感じます。
そう考えていくと、不登校に悩む日本の学校も、5か月間の退避期間を経て再開した本校も、同じ視点で努力を重ねていかなければならないのではないかと思います。特に本校は、激動の1年を過ごしていますので、その視点に一層集中しやすい環境にあるとも言えるでしょう。

ただ、誤解してはならないのは、長いブランクがあったからといって、子どもたちを甘やかすこととは違うということです。学校の先生が子どもにかける愛情とは、手や口を出してお客様のようにもてなすことではありません。むしろその逆で、温かく見守りながら、あえてチャレンジさせ、時には失敗を経験させ、苦しみながらも成長できるよう励ますことこそが、学校ならではの愛情だと考えています。これも、学校に戻ってきた今だからこそできることです。

なお、朝の様子をNHKテヘラン支局が取材してくださいました。取材当日夕刻、ニュースでその様子が放送され、イランから久しぶりに平和な光景が伝えられたことは、とてもよかったと思っています。まだ数日はインターネットでも視聴できますので、ぜひご覧ください。

 

テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ

さあ、みんなが、がっこうにもどってきました。これまでさみしいおもいをさせましたが、これからはみんながいます。せんせいたちもあなたをささえます。おもいきって、いろんなことをしてみてください。

校長室から『学校だからこそできることを考える~5カ月ぶりに通常授業を再開~』

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