校長室から『国境を越えて繋がる力を育てる~コリアンスクールとの交流会~』
先週木曜日、コリアンスクールとの交流会を本校で行いました。正確に調べたわけではありませんが、コリアンスクールの職員の方によると、30年ほど続いている行事だそうです。同じアジアの国として、中東の地で長年にわたり協力関係を築き続けていることは大変誇らしいことですし、先達の方々が受け継いでこられたこの伝統行事は、今後も大切に発展させていかなければなりません。
両校とも、先行き不透明な中東情勢の影響を受けて、児童生徒数は年々減少しており、厳しい学校運営が続いています。本校は5名の児童生徒が参加し、コリアンスクールからは4名が来校しました。人数でいえば9名。決して多くはありませんが、だからこそ、一人一人がしっかり関わることのできる、濃密な交流の時間となりました。
まずは、両校の児童生徒による英語での挨拶です。特に、コリアンスクール小学部6年生の流暢な英語スピーチには、聴いている者すべてが感嘆しました。こうした出会いも、国際交流ならではの貴重な経験です。
続いて、各校が企画したゲーム大会を行いました。本校の企画は○×クイズです。出題はすべて英語で行い、内容も日韓両国の文化や自然に関する問題を取り入れました。参加した児童生徒は、正解・不正解に一喜一憂しながら、楽しそうに取り組んでいました。
次に行ったコリアンスクールの企画は、「だるまさんが転んだ」です。映画『イカゲーム』で知られるようになりましたが、「ムグンファコッチ、ピオッスムニダ(むくげの花が咲きました)」という合言葉で遊びました。言葉は違っても、似た遊びがあることを体感し、文化の近さを自然と感じ取ったことと思います。
本校の教育方針の大きな柱の一つは、グローバル人材の育成です。この学校に通う子どもたちは、将来、直接・間接を問わず、外国と関わる生活、外国を意識した生活を送ることになるでしょう。そのためには、国境を越えて人とつながっていく力を身に付けることが不可欠です。
その力の大きな要素の一つが語学力です。今回の交流を通して、語学力の不足を感じた子も多かったことでしょう。英語や韓国語を使って、もっと話したいと思ったに違いありません。世界中の人とつながるためには英語力が必要であり、最初にスピーチをした韓国の小学生の姿に刺激を受け、「あんなふうに話したい」と感じてくれたなら、この交流会には大きな意味があったと言えます。
しかし、語学力以上に大切な力があります。それは、「つながろうとする気持ち」です。これがすべてのベースだと、私は考えています。少し昔の経験になりますが、私がソウル日本人学校に勤務していた頃、韓国人教師との宴会がよくありました。ひとしきり韓国の良さを語った後、必ず「日本はどうですか」と尋ねられました。その問いに応えられるかどうかで、会話の広がりは大きく変わりました。語学力の問題というよりも、会話に入ろうとする姿勢や、相手に伝えたい内容を持っているかどうかが重要だと感じた経験です。
こうした意識は、「話してみなさい」「やってみなさい」と言われただけで育つものではありません。今回のような交流を通して、うまく話せなかった自分と向き合ったり、次はこんなことを話してみたいと考えたり、日本では当たり前のことが韓国ではどうなのだろうと疑問を持ったりする中で、少しずつ育っていくものだと思います。今回の交流会は、そうしたグローバル人材としての素養、その土台を育てる貴重な機会だったと感じています。
さらに印象的だったのは、コリアンスクール校長先生の笑顔です。笑顔は自然と周囲に伝わり、そこに国境はありません。人と人をつなぐ大きな力になります。誰もが同じようにできることではありませんが、笑顔が「つながる力」の大きな武器になることを、改めて実感しました。
学びの多かったコリアンスクールとの交流会。来年も、再来年も、そして何十年先までも続いてほしいと心から願っています。
テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ
かんこくのこどもたちと、はなしはできましたか。すこしはなかよくなれましたか。らいねん あったときには、ことしよりも もっと つながれるよう、ちからを つけていきましょう。
