校長室から『努力して学年の壁を越えていく~百人一首大会を開催~』
先々週の緊急避難帰国では、子ども達も派遣教員も慌てる状況となり、その直前にあった出来事を皆様にお伝えすることができませんでした。しかし、時間が経った今でも、ぜひお伝えしたい大切な出来事ですので、振り返りながら紹介します。
それは、百人一首大会を通しての出来事でした。この百人一首大会は、テヘラン日本人学校の伝統行事で、児童生徒数が少なくなっても大切に続けています。年齢のカテゴリーは、4年生以下の低学年の部と6年生以上の高学年の部に分けて行いました。国内の学校では、こうした学年の枠を越えた活動はあまり多くありませんが、本校のような超小規模校では日常的に行われています。その結果、上級生が下級生に負ける場面も生まれます。上級生にとっては悔しい経験になりますが、社会に出れば年齢に関係なく競い合う場面は多くあります。どんなことでも上級生が常に優位に立つとは限らず、それは自然な姿だと言えるでしょう。
1月初め、百人一首大会を目前にした練習会で、1年生が4年生に負けました。多くの場合、そのまま終わってしまいがちですが、ここからが素晴らしいところです。悔しさをバネに、1年生は家に帰ってから百人一首を一生懸命覚えたのでしょう。数日後、4年生に再試合を申し出ました。私は校長室にいたのですが、「たのもぉー!」という1年生の大きな声が聞こえてきました。担任の先生は、この行動を「道場破り」と呼んでいました。再試合の結果は惜敗。4年生は1年生教室の看板を取り上げました。挑戦して負けた場合は、その代償を払わなければなりません。教室前に掛かっていた「1・2年生教室」の看板がなくなり、1年生はしょんぼりしていました。3学年上の上級生に挑戦した1年生も立派ですし、挑戦を受け止め、返り討ちにした4年生も立派です。こうした学年を越えた学びの営みが、これからも繰り返されていくことを願っています。
そして迎えた百人一首大会当日。青札の部、緑札の部ともに制し、1年生が低学年の部で優勝しました。あの“道場破り”の後、家族で猛練習を重ねたそうです。1年生は、努力を続ければ、かなわなかった相手にも勝てることがある、できなかったこともできるようになる、という大切な成功体験を得たことでしょう。一方、敗れた4年生は、油断していれば下級生にも追い抜かれるということを実感したはずです。双方にとって、非常に貴重な学びの場となりました。来年はまた違ったドラマが生まれることでしょう。
本校は人数が少ないからこそ、国内の学校ではなかなか味わえない経験ができます。当日は、さらに本校らしい場面も見られました。低学年は3名のため、1名が常に対戦相手がいなくなります。そこで、会場で応援してくださっていた方々を指名し、対戦してもらいました。親子対決になったり、おじさん・おにいさんのような存在と対戦したりする姿もありました。子ども達は何週間も練習してきましたので、大人が負ける場面も多くありましたが、皆さん快く引き受けてくださいました。
最後は恒例の「ふるまいぜんざい」。保護者の皆さんが作ってくださったおいしいぜんざいをいただき、激戦の熱をクールダウンし、勝った子も負けた子も、心があたたかくなる時間となりました。
テヘラン日本人学校らしさが詰まった百人一首大会でした。派遣教員が退避する2日前の出来事でした。
テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ
しょうがい、きおくにのこるであろう、ひゃくにんいっしゅたいかいでした。ことしかんじたことをわすれず、らいねんにのぞんでください。
