校長室から『たった一人の卒業生のオンリーワンの卒業式~2023年度卒業証書授与式を終えて~』
先週、本校の卒業証書授与式を行いました。55年の歴史を持つ本校ですが、小学部、中学部合わせても卒業証書番号は、今年の卒業生が199号となります。過去には200人も在籍した時期もあるにもかかわらずこの人数ということは、卒業までに帰国する児童生徒がいかに多かったかということです。それは、保護者の駐在期間が2,3年というケースが多いだけでなく、国際情勢から一時退避を余儀なくされた歴史も大きく影響しているように思います。本校で、教育課程の節目“卒業”のタイミングに在籍しているというケースは少ないのです。
今年度の卒業式は、小学部6年生1人。証書授与の後、校長式辞、日本国大使館大使、学校運営委員会委員長、PTA会長の祝辞と4つのスピーチが続くのですが、いずれも卒業生一人に宛てたメッセージです。このような個人に宛てたスピーチを受けるのは、本校の“卒業式”を除けば、結婚式ぐらいでしょう。私の式辞はさておき、来賓の方々のスピーチ、メッセージが笑いあり、涙ありとなったのは、一人の卒業生にフォーカスされた式だったからでしょう。
また、卒業生のお父さんが式当日の夜、学校宛にメールをくださいました。そのメールには、「日本人学校は生徒一人一人が主役になり、役割を果たす素晴らしい環境です。卒業式に臨んでみると、子ども達が日々感じている“当事者感”を疑似体験できました」と綴ってありました。とてもありがたいお言葉をいただき、職員一同、達成感とともに更なる使命感が湧きました。
この“当事者感”、私はとても大切な言葉だと思います。「学校は誰のものか」というのが、教育者としての私のテーマですが、それは在籍する児童生徒であり、保護者であり、これまで支えてこられた日本人です。そのことを一心に考え、本校職員は教育活動を展開してきました。そのことを卒業式という儀式で感じていただいたことを大変うれしく思います。
しかし、その“当事者感”を一番強く感じさせたのは、卒業生の姿でした。たった一人で臨む式は、決して居心地の良いものではなかったはずです。多くのスピーチを一人で受け止め、保護者や先生、下級生へのメッセージを一人で読み上げる緊張は、経験がない私には想像もつきません。しかし、そんな状況であっても、立派に立ち居振る舞い、多くの方々に感謝の言葉を彼らしい言葉で、伝えてくれました。成長した証をこうした姿でしっかり見ていただき、そして多くの方々からの祝福の拍手を浴びる卒業式は、まさにオンリーワンの卒業式となりました。
日本の学校では、卒業生のお父さんがおっしゃられた“当事者感”をどうすれば創れるのか、どうすれば子ども達が主役になれるのか、試行錯誤が続いています。少人数という数的環境だけで片付けることなく、学校はこのことを真剣に考えなくてはなりません。本校も、それは同じです。もっともっと、子どもの“当事者感”が出る教育活動を模索していきたいと思います。
テヘラン日本人学校で学ぶ子どもたちへ
〇〇さんらしい、そつぎょうしきでしたね。そして、みなさんも、〇〇さんへのかんしゃのきもちをじょうずにさくぶんにしていました。やさしさにつつまれた、すばらしいしきでした。