校長室から『日本は教育課題に対応する力が劣っている?~現地校、インターナショナル校を訪問して~』

 先日、日本では共通テストが実施され、今年度の大学受験が本格的に始まりました。今年から新たに『情報』という科目が試験に加わり、その内容に注目が集まりました。しかし、私たちテヘラン日本人学校の派遣教員が驚いたのは、この『情報』の出題内容ではなく、世界史の問題にイランが取り上げられたことでした。問題は1978年のイスラム革命に関するもので、革命前後の社会変化について問われる内容でした。本校の卒業生なら、全員が正解できる程度の内容で、それほど難しくはありませんでした。

現地のスタッフにこの話をしたところ、「日本の大学入試でもイランが取り上げられて嬉しい」と言っていました。しかし、私は複雑な気持ちを抱えました。確かに、イランに関する内容が入試で取り上げられること自体は喜ばしいことです。しかし、その内容がイランをネガティブに捉えかねない点に懸念を感じたからです。イスラム革命後、イラン社会においてヒジャブ(髪の毛を覆うスカーフ)は象徴的な存在となり、その着用については国内でも議論が続いています。これもイランの現実の一部ではありますが、イランにはペルシャ帝国時代からの貴重な遺跡や文化遺産が数多く存在し、世界の歴史においても重要な役割を果たしてきました。受験生に限らず、多くの方には、こうしたイランの歴史や文化にも目を向けてほしいと思います。

前置きが長くなりましたが、1月中旬から現地校やインターナショナルスクールへの訪問を続けています。どの学校も素晴らしい取り組みを行っており、学びの多い時間を過ごしています。例えば、訪問したインターナショナルスクールでは、国際バカロレア(IB)認定校として、個人および集団での探究学習(PBL)を積極的に推進していました。幼稚園から英語の学習が始まり、中学生になると理科の授業はすべて英語で行われています。理科の先生が英語で課題を出すと、生徒たちは次々に手を挙げ、先生に指名されなくても自分の考えを英語で話し始めました。授業テーマは遺伝子についてで、英語を流暢に話す生徒たちの姿がとても印象的でした。

その学校の先生から、「日本の学校では探究的な学びが進んでいるのか?」と尋ねられました。私は、「日本でも探究的な学びを大切にしようとしていますが、高校・大学の入試がペーパーテストで測られるため、小学校では探究的な学習ができても、中学校や高校では次第にその比重が少なくなってしまう」と伝えました。イランも日本同様、学歴社会であり、大学入試が人生を大きく左右する重要な転機です。そのため、「イランにも同じような課題があるのでは?」と尋ねると、「以前はそのような課題があったが、現在では共通テストの点数が40%、高校時代の成績が60%という割合で入学選考が行われている」とのことでした。この回答には少し驚きました。イランは、行政からの迅速な対応で時代の流れにしっかりと対応しているようです。

一方で、日本では大学入試改革が進んでいるとはいえ、従来の学校推薦や総合型選抜(AO入試)は増えているものの、依然として共通テストや学力テストに基づく一般入試が主流です。国際社会で活躍できる人材を育成するためには、イランのように学びの過程を重視する入試選考方法に変わっていくことが求められるでしょう。

日本でも、一日も早く大学入試改革が進むことを期待しています。

 

テヘラン日本人学校で学ぶ子ども達へ

てへらんにある、がっこうをほうもんして、がくしゅうしているようすをみました。どのがっこうも、しっかりがくしゅうしているこたちばかりいました。「べんきょうはすきですか?」ときくと、ほとんどのこが「すきです」とすぐにこたえていました。

校長室から『日本は教育課題に対応する力が劣っている?~現地校、インターナショナル校を訪問して~』

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